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君を想うとき





 君を想うとき。

 それは、朝起きたとき。

 君はちゃんと起きれたかな?
 それともまだ夢の中?

 君は寝ぼすけだから遅刻は当たり前。
 こっそり教室に入って来て、だけどやっぱり先生に見つかって廊下で立たされる事なんてしょっちゅうだったね。



 君を想うとき。

 それは、お昼ご飯を食べているとき。

 君も今ご飯を食べているのかな?
 それともやっぱりまだ夢の中?

 君はよく早弁してお昼にお腹をすかせてた。そんな君を見兼ねてオカズをあげた事もあったね。



 君を想うとき。

 それは、放課後。

 君はもう帰宅ちゅう?
 それともまだ学校に居るのかな?

 授業中いつも寝ている君はよく居残りさせられていたね。
 そんな君と一緒に居たくて誰も居ない教室でプリントそっちのけで二人でお喋りを楽しんでいたよね。




 君を想うとき。

 それは、夜寝るとき。

 君はもう夢の中?
 それとも夜の街で遊んでいるの?

 眠れない夜、君は私に会いに来てくれた。私が眠くなるまでずっと、楽しい話を聞かせてくれたね。



 君を想うとき。

 何をしているときもどんなときも。

 私は君を想っている。

 君を残して来たあの街で。
 君はどんな毎日を送っているのか。

 私達が離れてからずっと。

 私は君を想っている。



 ねぇだけど。



 どんどん私の中の君が。

 小さくなっていくよ。
 消えそうになるよ。



『……プッー、プッー、プー』



「また話し中」



 ねぇ君は、今何を想っているの?





  ■ 君を想うとき ■








 始まりはただ、私が学級委員長で。君が問題児だったから。

 担任は手に負えない君を私に押し付けた。だから君といる時間が、学校生活の中で一番長くなった。

 初めは押し付けられた事に不満を感じていた。よりによって何で、あいつ? なんて思ったりしていた。

 だって君はいつでも自由な人だったから。

 色んな重圧をかけられている私とはあまりにも違っていて。正反対で。そんな君があまり好きになれなかった。

 だけど。

 私は君と接していくうちに、君の優しさを知り、強さを知り、弱さを知り、そして恋をしていた。



 いつものように二人で居残りをしていたある日の放課後。君は言ったね。

「サチが好きだ」

 私の気を引きたくて馬鹿ばかりやっていたと。私と一緒に居たくて悪い事をしたと。前からずっと好きだったと。

 そう、付け足しながら。

 真っ赤な顔で。だけど真っ直ぐ私を見つめて。




 君と付き合ってからは毎日が180度変化したよ。目に映る全てのものが輝いて見えて、新鮮で、幸せな毎日。

 朝は早起きをして君を迎えに行く。一緒に寄り道して初めて遅刻した事もあった。

 昼は君の分のお弁当を抱えて中庭でプチデート。君はよく私の膝でうたた寝をしたね。

 夜は私の知らない場所に。夜景の綺麗な古いビルの屋上や、少し大人のバー。ゲームセンターやカラオケなんかも初めてでとても楽しかった。





 だけどあの頃の私は周りを見失いかけていた。私がもう少ししっかりしていたら。私がもう少し大人しく出来ていたら。

 私達は離れる事なかったんだよね。



「サチ、本当に? 本当に?」
「うん、毎日帰りが遅いってずっと怒られていたの。だけど私ハルトと一緒に居たいから親に反発してた。そしたら」
「……それで、引越しかよ」
「もともと転勤の話はあったみたい。だけど今回の事で親もその話本格的に受ける事になっちゃって。…もう決まったの」



 君はずっと謝っていたね。俺のせいでサチはここから離れるようだって。

 だけど私が悪いんだよ。

 ハルトしか見てなかったから。ハルトが居ればいいって思っていたから。親の言う事きかなかった。




「サチ、離れたくない」

「私だって」

 だけど二人はまだ子供だから。親なしでは生きていけない。二人で生きていくには若すぎる。

「ハルト離れたら私達は終わり?」

 そんなわけねぇだろと、ハルトは私を抱きしめた。

「必ず会いに行く。距離になんか負けない。負けるわけない」

 その言葉を信じて、私はハルトと離れる事を覚悟した。大丈夫だって、そう思ってた。


『……プッー、プッー、プー』



 君の言葉があったから。君の想いが本物だと信じたから。

 だから離れても君を想っていようと思ったんだよ。



 ハルトと離れてもうすぐ一ヶ月。君の携帯は、今日も話し中。






「遠距離の彼氏に電話が繋がらない? そんなの自然消滅ってコトじゃん」

 新しい学校で一番最初に友達になった女の子はそう言う。

 ―――自然消滅?

 いつの間にか私達は終わっていた、そういう事?

「離れていてもなお付き合って行く理由なんてないよ、近くに居てなんぼでしょ。遠くに居る女なんてもう用ナシなんだよ」

 そうなのかな?

 本当にそうなのかな?

 君にとって私は用ナシなのかな?


「きっともう新しい彼女居るよ? サチも早くいい男見つけなきゃ」

 友達の心無い言葉に傷付き、何が何だか分からなくなった。

 ハルトは私の代わりが見つかった?

 私じゃない女の子と、私達が過ごしたような時間を今過ごしているの?


 寂しい、辛い、苦しい。


 ねぇハルト。
 君はどんなフウに笑うんだっけ?


 私それさえも忘れちゃうよ。


「ハルトぉ……」


 聞きたい、聞きたい。

 君の声を聞きたい。


 君を想うとき。

 君の声を聞きたくなるとき。




 会いたい、会いたい。

 君に会いたい。


 君を想うとき。

 君に無性に会いたくなるとき。



「サチ!」



 そう、この声。この姿。



「サチ!!」



 君を想って幻を聞いた。
 君を想って幻を見た。

 幻は私に触れて抱きしめる。会いたかったと抱きしめる。

 これはずっと君を想っていた私にくれた神様からのプレゼント。



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