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不思議な来訪者
8

カーテンの隙間から差し込む朝日に照らされ俺は目を覚ました。


今日は土曜。特に予定もないわけで…

「(二度寝でもすっか…)」

天井を見上げぼんやりそう思った。


俺が再び微睡みに身を委ねようとした次の瞬間、上に感じた重みと、「…お、は、よう…」と言う心地よいが、たどたどしい声。


その二つで完璧に覚醒した俺の目に飛び込んできた端正な顔。


見たことのないような美形が俺の上にいた。





寝起きも手伝っていまいち状況が把握できない。


が、とりあえず…
「…顔がちけぇーんだよ」アッパーカットを決めてみた。

























二人をリビングの床に正座させ、その一方で腕を組んで仁王立ち状態の俺。

「で、ようするに、前髪をわけた状態の美形のお前は壮史で、俺の部屋にいるのはこの馬鹿(武)が鍵を開けてテメーを入れやがったからだと…そう言うことだな?」

「(コクン)」

「…おぅ…」

俺を見上げ、瞳を輝かせながら素直に頷く壮史と顔色が悪く、歯切れも悪い武。

「テメー武、覚悟できてんだろーな?あぁ?」

「ちょッ!!なんでオレだけなんだよ!!壮史さんは!?」

「元はといえばテメーがコイツを部屋に入れやがったのが原因じゃねぇかよ。従兄弟だからってウチの鍵を乱用しやがって」





「だからって何で俺だけなんだよ!!俺だって突然壮史さんに呼び出されて鍵と食材買って来いって言われて死ぬ気で走って来たってーのに何故か殴られて気付いたらリビングだったんだそ!?挙げ句の果てに蛮に顔面殴られて意識戻されたオレって?!」


チッ。突然逆ギレかよ。ウゼー。


「壮史には既に教育的指導済みだ。だから次はテメーの番だろォ?」

つーわけで、「くたばれ」バキッ!!


言葉とほぼ同時に俺の踵が武の顔面にめり込んだ。






倒れた武は放置しておけばその内起きんだろ。
なんてったってタフな馬鹿だからな。

叔母ちゃんの手前全力ではヤれてねーしな。


「あー、ストレス解消。で壮史、お前はどうして欲しい?」


起き抜けのアッパーカットをもろに喰らってピンピンしているくらいだ。

伊達に不良共を統括してねーな。


一応、教育的指導済みとはいえ、あまりに堪えてない様子に今一つ面白くない。


じっと見上げてくる壮史に俺も改めてじっと壮史を見てみた。


コイツの今のこの顔、シベリアンハスキーにそっくりだな。



前髪をサイドに分けた壮史は銀髪に鋭く切れ長のアイスブルーの瞳。日本人にしては高い鼻に形の良い唇。


客観的に見れば、女に好まれそうな容姿。かなりの美形だが、俺にとっては壮史の顔が良かろうが悪かろうが対した違いはない。


問題は、シベリアンハスキーにそっくりだという点だ。


昨日のことは犬に舐められたと思えばいいか。


気付けば、俺は吸い寄せられたかのように壮史の頭を撫でていた。



「来い、壮史。飯にするぞ」

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