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私立水晶華学園
事態は進む

燈眞side

生徒会室内は静寂に満ちていた。聞こえるのはキーボードを叩く音や紙が擦れる音のみ。

「次」

俺はそう言って隣で仕事をしている双葉に左手を差し出す。


視線はパソコン画面から逸らさずに。


「………」

しかし、次に片付けるべき資料はまわって来ない。

まだ仕事は山のように残っているはずだ。


「早くしろっつーんだよ!!」

打ち込みがなくなったにも関わらず、次の仕事がまわって来ないことに苛立ち俺は隣を向き双葉を怒鳴りつけた。


「副会長…いったい急にどうなさったのですか?」

うっすらと目の下に熊がある双葉はこれでもかっと言うほど眉間にしわを寄せている。

もの凄い怪訝そうな顔だ。
まあ、確かに言いたいことはわかる。昨日までほとんど仕事をしなかった人間が急に仕事をしているのだから。


だが、下らんおしゃべりをしている暇はない。
四限目のチャイムがもう鳴ってしまったのだから。


もうこうなったら、昼飯返上で今日中に終わらせてやる。

雫に会いたいが、今は我慢だ。


クラスにはろくに行かないし、クラスのヤツの顔すらろくに覚えていないのに。
ゴミのような奴らがいるクラスでも、その中に雫がいると思うだけで俺の心情は劇的に変化した。

この俺に好きな人ができるなんて夢にも思っていなかった。

そして愛しいと思う気持ちがこんなにも暖かいものだったなんて、雫が俺の前に現れなければありえなかった変化だ。

アイツ等のせいで俺は、愛というものに嫌悪感しか持っていなかったのに。


「いいからさっさと渡せ。ソッコー終わらせっから」
「…何か変な物でも食べたんですか?」

「テメェー、何て言い草だ…」

マジで不思議そうな顔がムカつく。


だが、まあコイツの反応もわからなくはない。双葉の目元の熊に気を遣って言い方を和らげるなんてことは確かに俺らしくない。


自分でも気色ワリィと思うがこれも雫の影響だと思うと嬉しくなる。

この時の俺の機嫌はかつてないほどよかった。

ドンドン!!
ドンドン!!ドンドン!!
突然激しいノック音が響いた。
この時までは。

[before??][after!!]

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