私立水晶華学園
2
双葉side
焔火先輩に一体何があったのかは知らないが、なんにせよ自分の仕事をやってくれる気になったのは私にとって良いことだ。
そんな中での突然の騒音。私の額に深い皺が刻まれたのは言うまでもないだろう。
「誰だ!?」
副会長の親衛隊(セフレ)か。そう思うと自然と声が堅くなる。
ドアに向かって声を荒げると突然ドアがけたたましい音を立てて開いた。
「「焔火!!」」
「は?」
生徒会室に飛び込んで来たのは二人組だった。
「お前等は…」
焔火先輩を様付けで呼ばないことや呼び捨てしていることから先輩と同学年かつSクラスだと推測できる。
…確か、緑園達哉先輩と萌黄晃暉先輩という名前だった気がする。
だが、先輩は二人が誰かはわからないらしい。
怪訝そうな顔をしている。
クラスメイトの顔がわからないなんて先輩らしいと言うか何と言うか。
「焔火!頼む!雫を、雫を助けてくれ!!」
「何だって!?どういうことだ!?」
焔火先輩が目を剥いた。
「俺達が雫を誘って食堂にいったら、突然神娜が食堂に現れたんだ。そして、雫の首を絞めて気を失わせ連れ去ったんだ!」
「テメェー!雫と一緒にいたんじゃねーのかよ!」
焔火先輩が頭に血を昇らせて相手に掴み掛かるのは今に始まったことじゃないが、先輩が誰かの為に、というのは今まで一度もなかったことだ。
「副会長。そんなことしてる場合じゃありません。もし本当に【神娜】に連れ去られたなら、危険です」
「そうだぞ二人とも!早く雫を探さないと!」
このままだと埒があかないと踏み、焔火先輩に言う。萌黄先輩もそう考えたらしく、焦りながら二人に告げた。
「クソッ!」
そう叫び、今にも生徒会室を飛び出していきそうな焔火先輩に私は問い掛けた。
「居場所もわからないのに何処に行くつもりですか?」
「しらみ潰しに探すしかねーだろ!」
相当焦りながらも一応この場に留まる先輩。
さすがは副会長、いくら焦っているとは言え、こんなに広い学園を何の情報も無しに探し回ることの難しさをしっかり心得ている。
だからこそ私は提案した。
「晴留に連絡します」
[before??][after!!]
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