フリー小説置き場 静かな月夜にA ぼんやりと水のせせらぎを聴いていたクロエは、不意に右肩に重みを感じた。 顔を向けると、セネルがもたれかかるように目を閉じていた。 「ク、クーリッジ…?」 「悪い、クロエ…。 少しだけ、こうさせてくれ」 肩にかかる重みはたいした重さではない。 だから、慌てて放そうとすればできたはずなのに。 どうしてもそれができなくて。 しばらくされるがままだったクロエは、そっとセネルの方を見た。 「…もしかして、疲れたのか?」 小さな声で話しかけると、返事が帰ってきた。 「まぁ…今日はウィルに駆り出されていろいろあったからな…」 ウィルの手伝いをしているうちに、すっかり街の人々から頼られるようになったセネルは、なかなか忙しい日々を送っている。 本当は、疲れていたのだろう。 それでもこうして、自分との鍛練のために時間を割いてくれる。 そんなセネルの心遣いが嬉しい。 「クーリッジ。疲れているのなら、今日はもう…」 この辺りで、切り上げようか? と、続けようとしたのだけど。 [*前へ][次へ#] [戻る] |