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psychotic
9

昔、子供の時に苛められて怪我をした龍一を見て心配した俺に向けた笑顔だった。

俺に心配させないように痛みを我慢して、無理に笑顔を作っている龍一の顔。


俺には解る、龍一が無理して笑っているって。


「でも雅人に嫌われるって事は俺にとって世界が終わると同じくらい重大な事でさ・・凄く辛いんだ。・・・だからお願い、これ以上俺を嫌いにならないで・・雅人の口から別れを言わないで欲しい・・・辛すぎて俺、死んでしまうからさ」

「龍一・・・」

「だから俺から言うよ」


龍一は震える唇で、真っ赤に充血した目で俺を見据えて・・・





「今までありがとう」






「・・・・え?」

今まで有難う?・・それは俺がさっき淳に言ったセリフでも有る。
それってつまり・・・



「別れ・・る・・よ」


こみ上げてきたのだろうか、龍一の声が途切れながらも言ったセリフに俺は耳を疑った。


信じられない展開に俺は思考が働かない。

今・・・龍一が俺に別れる・・って言った?

予想外の展開に俺は瞬きも出来ずに龍一を信じられないといった具合に見ていることしかできない。



“大ッ嫌いだ”

俺が我慢出来ずに龍一に言った言葉。

だが、この言葉一つでこんな事になるとは思いもしなかった・・・そう、いつもの様に龍一は俺に縋りつき嫌いにならないで!と悲願しながら俺への束縛を激しくするか、逆上して俺を無茶苦茶に犯しだす・・・そんな事態が頭の隅にあったのだ。
だから龍一の言葉が未だに信じられない。夢のようだがココは現実。


・・・やっと・・

やっとチャンスが来た。
夢にまで見た龍一との別れの時がついに来たのだ。
しかも、想像すら出来なかった事に、龍一の口から別れの言葉を言ってくれた。

自由になりたい俺はこの時をずっと願っていた。

嬉しい・・・嬉しいはずなのに・・・龍一の顔を見て俺は心が痛んだ。

さんざん苦しめられてきたのは俺なのに!
さんざん悩んで、泣いて、身も心も傷ついてきたのは俺で傷付けてきたのは龍一なのに・・・

なんて顔してんだよ・・・龍一・・


あまりにも辛そうな龍一の顔を見てられない。

龍一は本当に俺の事が好きなんだ。
どうしようもなくらいに俺を愛している

それは多分、今でも変わらない。
それなのに龍一は自分の感情を押し殺してまで俺の為に別れを告げてくれている。

そんな一生懸命の龍一から目を背けては駄目だ。
俺はゆっくりと深呼吸をした後、しっかりと龍一の顔を、目を見た。

「龍一、ありがとう」

俺は最後に制服のジャケットに袖を通した。

龍一は何も言わず・・・言えず・・ただ突っ立て、俺を見ていた。

昔からそうだった。龍一は変な所で不器用なんだ。
不器用だから上手に愛する事が出来ない・・・馬鹿で真っ直ぐな愛情を相手にぶつける事しか出来ない愚か者だ。

愚か者だけど、真っ直ぐな奴だったと思う。

そして俺は大馬鹿者で最低な人間。
こんなにも愛してくれる人がいるのに俺の脚は淳の元へと向いている・・・あんな姿を見られて、知られて・・・もう、友達ですらいてくれないかもしれないのに・・・。


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あきゅろす。
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