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psychotic
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でも、勇気を出して俺に別れを告げた龍一を見て思った。
俺も逃げずに淳に思いを伝える。

逃げない!

そう確信したときだった


「雅人・・・あいつの所に行くのか?」

とても小さな声で龍一が俺に問うた。

「龍一には全てお見通しだな・・・俺以上に俺の事を理解してるよ」

「間違いないよ。雅人の事を一番知ってるのは俺だよ」



-ドキン・・・



本当は泣きそうなくせに頑張って俺に笑顔を向ける龍一を見た瞬間、俺の心臓が高鳴った・・・気がした。

「あぁ・・・駄目かもしれないけど、淳に会ってくる」

「そうか・・・きっとうまくいくよ。頑張って」

「え?・・あ、ありがとう」
俺の目の前にいる男は誰だ?本当に龍一なのか?
ありえない・・・龍一が俺の恋路を応援してる?
龍一の言葉に戸惑ってしまう。

「雅人・・・安心して。雅人がこの家を出た瞬間から、俺から雅人に構うことはもう無いから」

「え?」

「俺から雅人に触れる事も、会いに行くことも、話しかける事もしない・・・あの扉を抜けたら雅人と俺は他人になる」

俺は玄関の扉を見た。
長年の経験で解る、龍一の言っている事は本当なんだろう・・・俺があの扉の外に出れば龍一とはあかの他人。友達ですらなくなる・・・当然か。

俺はゆっくりと玄関まで歩き出す。

一歩づつ


もう束縛される事も無い。

帰りに待ち伏せされる事も無い。

無理に抱かれる事も無い。

事有るごとに俺に「愛してる」を言う龍一の声も聞かなくてすむ。


全ては俺の望んだとおりになる。



それなのに何で俺の目からは大粒の涙が流れるんだよ・・・

後ろに居る龍一にはとうてい見せられた顔じゃないと思う。



「雅人・・・最後にお願いがあるんだ」
玄関にたどり着き、靴を履いた俺の背中ごしに龍一からの穏やかな声

「なに?」
龍一に振り返る事無く返事をして、さり気なく濡れた瞼を制服の袖口で拭った。



「最後に・・・雅人から、キス・・・してくれないか?」



キス?

俺から・・・キス。


俺は後ろを振り返り、龍一の両頬をそっとやさしく掌で包んだ。

背伸びをして、顔を傾けて・・・触れるだけのキスをした。

唇と唇が合わさった柔らかな感触と、暖かな体温・・・

思えば俺から龍一にキスをしたのはこれが始めてかもしれない。



最初で最後



俺はゆっくりと唇を離して龍一の顔を見た。

龍一は指で自分の唇に触れた後、俺を見て・・・嬉しそうに笑った

とても綺麗な笑顔だった


俺は玄関の扉を開き右足から外に出た・・・そして左足も

スローで閉まる扉の向こう側で龍一が声に出さずに口だけを動かして何かを言った。



-パタン



扉の閉まる音が妙に大きく聞こえた。
俺は一呼吸置いて歩き出す。


口の動きだけで解ってしまう龍一の最後の言葉





“あ い し て る”




俺はまた大粒の涙を流してしまった。









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