空恋-カラコイ-(切ない/片思い/従兄)
今日も、僕の好きな人は隣の部屋で誰かとエッチしてる。両耳を押さえて聞かない様にしているのに、余計な言葉だけが耳に入ってきて辛い。でも、今日で終わり…だから平気。
『好きだ……お前だけ』
誰に言っているのだろう?
毎日違う人に同じ事を言っている彼は、本当に好きな人は居るんだろうか?
暫くして事が終わったのか、バタンと誰かが部屋を出て行く音がした。
塞いでいた両耳を解放したら、ドンドンと僕の部屋を叩く音がして、僕は部屋の戸を開けた。
目の前には僕の好きな人。
従兄の保(まもる)が、上半身裸で立っていた。
「悪い」
「何で謝るの?」
「いつも、変な音とか…」
「平気だよ」
僕は、ニッコリと笑った。本当は泣きたいくらい辛いけど、迷惑掛けなくないから。僕はいつも笑ってた。
キュッと、本当に柔らかく僕を抱き締めた保。一体、どう言うつもりで僕にこんな事をするのだろう?
「笑うなよ」
「何で?」
「卓(すぐる)、いつも泣いてる」
「へ?」
僕が、泣いてる?
「笑ってるけど、泣いてる」
そう言われて、僕は自分の目元に手をやった。
でも、濡れてはいなくて、ただ、パリパリしていた。
あぁ、僕は知らない内に泣いてたんだ。
「悲しい時は、笑うもんじゃない」
「別に、悲しいとか思ってないよ?それに、泣く時は悲しい時だけじゃないでしょ?」
本当は、悲しいよ。
だって、保が好きなんだもん。
でもね、この思いは無くさないといけないんだ。
僕が保を好きだなんて言ったら、保は困るでしょう?
優しい保だから、さっき出て行った子みたいに僕を抱くでしょう?
そんな事になったら保はもっと自分を苦しめる事になる。
だからね、僕は何も言わない。
言わないよ。
「そうだけど…でも」
「やめよう」
僕は、ゆっくりと保から離れた。
「……?」
「僕は、平気。保と従兄弟同士…それだけで幸せ」
精一杯の笑顔で言った。
薄いけど、血で繋がってるんだもん。きっと、僕は大丈夫。きっと、保も大丈夫。
「卓…サンキュ」
大きい掌で僕の頭をクシャクシャと撫でる。その手も大好きだったよ。
保が出て行き、パタリと閉められた戸。
部屋を出て行く保の顔は、何故か寂しそうだった。
最後の顔は笑顔が見たかったな。
前から片付け始めていた部屋。殆ど物が無い僕の部屋。
僕はボストンバックを片手に部屋を出て行った。
僕が居なくなった空っぽの部屋。
三年間、保と過ごした思い出の詰まった部屋。
この部屋に、僕の初恋を置いて
保への想いを置いて
保の幸せを願いながら
さようなら
きっと、大丈夫
僕の空恋
END
【後書き】
これで良い
きっと、これで…おしまい。
保(大学一年)
卓(高校二年)
従兄弟のお話でした。
次も、こんな感じでグダグダに…
読んで下さり有難うございました!!
2009・10・19
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