私達は立つ! 終回、周会。 私は、その笑顔の下には悲しい何かがあると思っていた。赤の世界が消えていく。重たげな液体の色が消えて、質量が消えた。そんな頃になると、体はもうなかった。 「幸さん……。」 「ヒカリちゃん。」 「どうして。」 どうして、一人で決めちゃったんですか。私たちがまだ、弱いからですか…私たち達だって戦えるし、戦ってきた。なのにどうして、あなたは一人で戦うと決めたのですかっ! 叩きつけるような言葉を投げかけても、答えてくれる人はすでにいない。だから、彼女のパートナーは宥めようと何を言うか悩んで手を伸ばした時だ 「あ。みんな見て。紋章が。」 8つの紋章が地面と平行に円を描きながら光を放ち、新たな形に成り代わる。その形は見覚えがある。丸い形。柔らかな楕円を持つそれの名前をタケルが言った。 「デジタマだ」と。それを聞いてか、わーい、とパタモンが飛びしてデジタマを撫でる。卵は少し嬉しそうにしているように見える。 「このデジタマ幸ちゃんだよねー」なんていうから、きっとそうだよと言う。 「…結局帰れなかったのね」 「みたいたね。ヴァンデモンも言ってたもの『この世界に捕らわれろ』と」 「そうね。」 「ねえテイルモン。もしも、幸みたいに最後の一人になっても私といてくれる?」 「なんの為のパートナーよ、私は必ず力になるわ」 ぼつりぽつりと紡ぐ姿は、パートナーならでは、だ。そして一人が言えば波紋のように浸透して、デジモン達が言う。 「僕もだよ。賢ちゃん」 「私もですよ、京さん」 「俺もだきゃあ伊織」 「絶対に守ってやるよ」 「タケル、僕も守るよ」 パートナーなんだもん。と、笑いあう姿に反応してかデジタマがもぞもぞ動いて、孵る。デジタマから元気に飛び出したデジモンが、大きな伸びをする。 大きな白の耳を手のようにはためかせて嬉しそうに飛び跳ねる。 「僕、カイモンだよー。」 間延びした口調で、パタパタ跳ねる。こどもみたいに嬉しそうな笑顔が咲いている。 「よろしくねぇ?」 それは紛れもなくウサギの形をした小さな生まれたてのデジモン。 終回、周会。 (どーして泣いてるのぉ、痛い?)(痛くないよ。)(ぼくらは、嬉しいんだ)(うれしい?)(カイモンが来たからね。)(幸はぁ?僕はこども達に会うために来たんー…ふぇっ、涙が出てきたよー。どうしてっ?) [*前へ][次へ#] |