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私達は立つ!
悶傷、紋章。

「久しいな、子の人よ。」
「お前は」

強かな雨が連れてきた悪夢。忘れるはずもない、忌まわしい記憶を辿らずとも彷彿させる。

「ヴァンデモン。」

両目の十字傷は、私達の代が作った傷。よく見覚えのある傷だ。

「選ばれし最後の子供よ、子、供えろ。死を。」
「嫌よ。」

やはり、ヴァンデモンは居た。高石くんたちも倒したが、やはり高石くんの言うヴァンデモンと私の思うヴァンデモンは別だ。戦う為に、風を圧縮して武器を使う。他のデジモンのように自分から武器を関せず攻撃出来るだろうが、幸には使いこなせず、仕方なく風の剣を呼び出す文言をとなう。

「呼出武器-メイクアップ・ウエポン-天裂いた、風の剣。」
「異世界を渡り、デジモンと融合してきたか。微風を扱う娘、面白い、試してくれよう」

そして睨み合い、どう出るか伺う、ニヤリと笑いっぱなしの奴は、見ている限り気持ち悪くて、不気味さをも見えてくる。

「幸」

沈黙を破る高い声は、天を射抜いた。ピヨモンの声だ、なんて確認する暇なく。それが開始の合図のように私もヴァンデモンも動いた。戦わなきゃ。誰も救われないんだ。そう意識して、地を踏んだ。
元がウサギ型からとられたかして、脚力はつよい。ただ、やはり幼少期。完全体に叶うはずがない。
悔しげに奥歯を力の限り噛んだ。

「娘、お前が進化、出来ないのはお前が空っぽだからだ。」

希望が個性なんて言えたものじゃないし、私は欠損人間だと理解している。デジモンと融合している時点でも、私の個性も、どちらも無意味に近い。

「紋章だってそうだ。」
「お前が希望を。のぞみをのぞまないから、紋章が反応しないんだ」

希を望まない。だから、紋章が反応しない。そう耳元で囁く悪夢が聞こえる。希望を持たない、私。仲間だなんだ、と言われてもあの8人の人間と八匹のデジモンの小さなコミュニティで、和を乱すような存在の私を、誰も待ってくれはしなかった。逆もしかり私も待たなかった。だが、居ない所で、居なくなって良かった、なんて言われてどうしようなんて怯える私もいた。だがしかし幸は居なくなって、欲しいとは願った記憶は持ち合わしていない。

「正確に言えば、怖いから欠けていくんでしたね。人間の子。」

心も、記憶も、何もかも。

悶傷、紋章。
(お前は、何をしっている。あいつらの何を理解しているんだ!)


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