練習試合もまーくんの勝利(イリュージョンすごかった!)で無事に終わり、またいつも通りの日常が戻ってきた。ただいつもと違うのは、まーくんがやたらくっついてくる、ということだけで。 「まーくん、離れて!」 「嫌じゃ。」 頬擦りをしながら毎回拒否をされる。格好いいと形容される彼からは想像もつかない程可愛い仕草だけれど、ここは学校、みんなに見られる場所なのだ。こんなことがまーくんのファンの女の子達の目に触れたら…私はまず生きていられない。 「なまえちゃん、どうした?顔色悪いぜよ。」 こてんと首を傾げながら心配をしてくれるまーくん。これまたものすごく可愛い。あぁ、私のキャラも変わってきた気がするよ。大丈夫だよ、とまーくんに言うと満面の笑みで良かった!と言ってくれた。 「今日もブンちゃんの家に行こう…」 ピクッと反応すると、まーくんはやっと離れてくれた。 「なまえちゃん、それどうゆうことじゃ?」 「それってなに、」 がと言う前に屋上の扉がバンと勢いよく開いた。 「なまえー、なまえいるー!?」 「ブンちゃん、どうしたの?」 「あぁ、居た居た。お前マジ何した訳?」 「はっ?」 「ねぇブン太。この子がなまえちゃんかい?」 「ゆゆゆ幸村くん…そうだぜぃ!おいなまえ挨拶しろ!」 「え、ちょっ……はじめましてみょうじなまえです。」 じーっと幸村くんの視線を感じる。恐くて顔が上げられない。なんだって私を尋ねてきたのかな、まさかブンちゃん私がこの前ブンちゃんの買い置きしてたお菓子を一つ勝手に食べたことをまだ怒っててそれを幸村くんに言ったとか。どうしよ…私幸村くんに怒られるのかな。 「あのですね、幸村くん。ブンちゃんのお菓子を食べたのは私が悪いんだけど、ちゃんと他のお菓子買ってきて謝ったんだよ!」 とりあえず怒られるにしても何にしても言い訳くらいさせて貰わなきゃね。あれ?幸村くん肩震わせてるんだけど、そんな逆鱗に触れちゃった?ブンちゃんは顔を真っ赤にしてるし。 「なまえてめぇ!」 「あははははっ!」 「えっ?えっ?」 「みょうじさんて面白い人なんだね。」 「そんなことないよ!」 幸村くんは優しそうな少しおかしそうな笑顔で話しかけてくる。その姿はとても綺麗で思わず見とれてしまった。 「俺の顔に何かついているかい?」 いけないいけない、随分と幸村くんの顔を見てしまっていたらしい。ありのままに見とれちゃったんだよと答えると幸村くんはまた笑い出してしまった。 「幸村くんがすごい笑ってる…」 「丸井…なんで幸村がなまえちゃんに会いたがってるんじゃ。」 「なんでって…そんなの俺が知りたい。廊下歩いてたらいきなりなまえに会わせろって言うんだぜぃ?あいつ何かしたんじゃねーの。」 「ほぉか。」 「ブン太、帰るよ。」 「幸村くん!もういいのかよぃ?」 「うん、なまえちゃんに会うって使命はもう果たしたし。」 「そう…」 「じゃ、またねなまえちゃん。仁王、ちゃんと部活に来るんだよ。」 「ばいばい。」 「わかっとる。」 にこやかに幸村くんは去って行ってしまった。隣でブンちゃんはやたら怯えていたけど、大丈夫かな。 すると、くいくいとカーディガンの裾をひっぱられる。 「どうしたのまーくん。」 「なまえちゃんは幸村と友達になったんか?」 「うん、けど私なんかが精市くんの友達になっていいのかなぁ。」 「精市くん…」 「まーくん?」 なんだか難しい顔をしている。おかしなことでも言っちゃったのかな。 「なまえちゃんは友達になったら誰でも名前で呼ぶんか?」 「へっ?…うーん、どうだろ。女の子の友達は名前で呼ぶけど、男の子はなぁ…精市くんには名前で呼んでって言われたから名前で呼ぶけど、基本的に名字で呼ぶよ。」 ブンちゃんは例外だけどね。言い終わるとまーくんはさっきより難しい顔になってしまった。 「…さっきの話の途中じゃけど、いつも丸井の家に行っとるんか?」 「いつもじゃないけど、行くかな。お家が隣同士だからお母さん達の仲も良くて、一緒にご飯食べたりするよ。」 私が言い終わるとそれっきり、まーくんは話さなくなってしまった。教室に戻ってからも少し苦しそうな顔をしていて、なんだか私まで苦しくなった。 君と、幸村部長 (ふふっ仁王が好きになるわけだ) ←→ [戻る] |