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< GAP -Another- >
―――――この学園の陰険腹黒王子様は俺様な王様もよりもタチが悪い。
副会長席に優雅に腰をかけるザ・ハンサムに無言で手を出した西田智彦は常々そう思っているのだ。
「―――――どうかした?」
甘い甘いスィーツを見つけたように微笑むその笑顔にうっかり胸はときめいてしまうけれど、それが作り物だと知っているから鬼の書記様はその表情を変えることはしないのである。
―――――だって、学園の天使様と呼ばれる西田智彦の恋人はとっても狡賢い王子様なのだ。
「―――――僕のロッカーから盗んだ物を返してください」
素知らぬ顔で首を傾げる仕草には呆れた視線を投げかけるしかないのである。
―――――手紙の返答を求められたのはこれが一回ではない学園の天使様にはその手紙の行き先などすぐにわかるというのに陰険腹黒な恋人は学園きっての役者だからその事実をさらりと消し去ってしまう犯罪者なのだ。
「―――――窃盗罪ですよ」
だから、冷やかな一言というものを告げてみるのだけれど、面の皮のとんでもなく厚い王子様に効果が期待できるはずもない。
のれんに腕押しどころか逆にやり返してくる頭の良さに舌を巻く破目になるのである。
「―――――トモ」
神様はどうして智彦の趣味の悪さを修正してくれなかったのだろうか。
――――王子様スマイルで甘く名を呼ばれるのはとっても心臓に悪いのだ。
「―――――疑わしきは罰せずだよ。証拠がなければ犯罪は成立しないよ?」
なぜなら窮地にたってもいけしゃあしゃあとすっとぼける嫉妬深い容疑者に智彦は素敵な恋をしているからである。
―――――だから、溜息を吐いたフリで胸のドキドキを隠す鬼の書記様にはロッカーからあっさりと消えた恋文たちが生徒会室のシュレッダーにかかって今目の前にあるゴミ箱の中にあるのだと気づくはずもなかった。
End.
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