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< セクシーマン >
―――――気づいちまったのはいつの頃だったか。
なぁ、陣よ。
不機嫌そうなその面見るのが訳もなく楽しくてクラブ中の女をオマエにひっつかせたその時か。
それともいつも通りの悪ふざけって大義名分でオマエにしな垂れかかって見せたその時か。
―――――いずれにしろ、ろくでもねぇな。
気づいちまった後には後戻りもできねぇんだからよ。
『―――――別れろよ』
オマエのたった一言がオレにとっちゃ最高の睦言で、その低い声だけで十分骨の髄を刺激する。
『―――――臭せぇんだよ。その雌犬の安い独占欲丸出しの香水がな』
――――その口から汚物のように吐き出されるもろ刃の刃は甘美な毒となってこの心を狂わせる。
だから。
『―――――なんだよ、陣。すねんなよ。いつだってオマエだけだぜ、俺は』
アイツらの馬鹿笑いに背中押されて口から出ちまった軽口は、本音ダダ漏れのサイテーな真実なのさ。
今更回れ右して逃げるにゃ全部が全部遅すぎで、ろくでもねぇこの気持ちを自覚をした頃には冷めた面したオマエの隣から逃げることもできやしなかった。
何。
―――――わかってんのさ。
どうゆう男がオマエの隣に相応しいのか。
『悪でセクシーでクールな西崎君』
そのサイテー最悪な色男が今更『好きだ』『惚れた』だオマエに縋りつくには、"俺"ってブランドはもう立派に出来あがっちまってるってもんなのさ。
――――だから。
セクシーに。
淫猥に。
イタズラに。
――――その体に女の胸糞悪い情痕を見つけたオレは笑ってやるのさ。
『――――――妬けるな、陣。オマエはオレだけじゃねぇのかよ』
この5年。
―――――本音を冗談に変えるのだけがうまくなっちまったってわけさ。
End.
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