Main < ハジマリ > 「―――あの転校生。気に入ったよ」 クールビューティ―と呼ばれる生徒会副会長が、そう微笑んだ時。 ――『歯車』は回り始めた。 「本当におもしろい人物です」 時期外れの転校生を迎えに行った男は、はんなりと微笑んだ。そして、気取られない程度、一瞬ちらりを視線を飛ばす。 目と鼻の先をかすめて通ったその視線の行き先に、残念なことに神埼卓(かんざきすぐる)は心当たりがあった。 「へ――。紺野がねぇ?それは一見する価値有りだな。な〜?宗助?」 素知らぬ顔で、机に載せた足を組み直す。隣では無口は相棒が、小さく身じろぎした。 ・・・とうとう動くか。 ――卓は何の変哲もない白い生徒会室の天井を見上げた。 物腰柔らかで品が良く、もっぱら『王子様』と名高い生徒副会長。その紺野真彦(こんのまさひこ)は、冷静沈着でずる賢く、己の利益にならないことはしない、そうゆう男だ。 そんな男に気に入られたら最後、頭からバリバリと知らぬ間に食われてしまう。 だから。 ―――ご愁傷様。 腹黒王子が獲物を思って微笑んだ時、卓は相手の獲物へ慰めの言葉を贈った。 [*前へ][次へ#] [戻る] |