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< クラウンゲーム >
『―――――Bye』
――――――いつもニヤリと笑ってその腕から逃げているのは他でもない自分だ。
だというのに、偶々耳にした喘ぎ声が最悪に胸糞悪くてたまらないのも、また愚かな自分だった。
『・・あっ、あっ、会長・・・・・っ』
「――――――ちっ」
―――――だから、結局、風に吹かれるその階段踊り場で、神崎卓は馬鹿な己に舌打ちするしか選択の余地はない。
他の男を抱くその腕は自分のものだと。
―――――――そう口に出す気はさらさらない。
「―――――――お盛んだこと」
まして。
――――――なぜこの階段の踊り場が笑い狐のお気に入りのその場所なのか。
本当の理由すら誰にも話す気はしないのだ。
フ――――――。
視線の先の教室に人影はなく、その姿を無意識に探した自分は惨めを通り越してただ虚しいに尽きると卓は笑う。
"会長室"にその主の姿がないことが嬉しいのか哀しいのか。
――――――紫煙を吹かした卓は考えたくもない。
フ――――――。
ただのぼっては消えるその紫煙のように馬鹿馬鹿しいこの苦しさも消えてしまえばいいとそう思う。
「――――――恋の悲しみを知らぬものに恋の味は話せない、ね」
ジリッ。
ジリッ。
―――――――煙草を踏みにじるその足に密やかな苛立ちが込められて自然口元が笑みを結んだ。
「―――――――まだまだ青いねぇ。空も、俺も」
―――――笑い狐の感傷的なその呟を聞き留める者は誰もいない。
End.
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