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< 言葉はいらない 1 >
                   





「―――――最近、4人一緒の任務ないね」

ぼそっと呟かれた言葉に劉偉は寂しげな恋人を見つめた。




「――――劉ちゃんがやっと帰って来たと思ったらウォルフは任務に忙しいし、優も本部にいない。・・・つまんない」





―――どうやら優やウォルフにかまってもらえずに拗ねているらしい。


可愛らしい唇を突き出して俯き加減で不満を漏らす。

イリスの腕の中で苦しそうにもがいているペットの猫を救出し、劉偉は「そうだな」と相槌を打った。





        
――――数ヶ月に渡る長期任務は、実力に比例してその回数を増す。


それはこの政府組織アースガルドの常識である。


ましてオペレ―ターのウォルフやマザーコンピュータ『AXIS』管理を任されるイリスのように特別な隊員でなければ直のことだ。

実戦部隊の劉偉や優の長期任務は他の二人より各段に多いのだ。





――――実際、優は今も長期任務で本部にはいない。

劉偉も3日前に1ヶ月の長期任務から開放されたばかりだった。


仕事が仕事だけに無期限の任務が大半を占めているため、仲が良い4人が揃うにためには指名任務あるいは少ない偶然を待つしかないのだ。







「――――一緒の任務ないかなぁ」




――――昨日、本部基地で劉偉はウォルフを見かけた。


複数の任務指示を出しながら任務のシュミレーションをしている様子で落ちつきの中にも緊張が見受けられていた。

そのあまりに忙しい様子に劉偉は言葉を掛けるのをためらったのだ。




―――実力もさることながら心術や参謀に長けているウォルフは司令部の中でも司令・副司令に告ぐ立場にある。


そのため重要任務や会議などで忙しいのは常のことでそのことに関して心配はしていない。


ただ劉偉が知る限りウォルフは少なくとも2ヶ月、優に会っていないはずだ。


―――ネックなのはそこなのだ。







――――ウォルフは常に完璧だ。

知力・体力・精神、何においても他を圧倒する。

アースガルドにいる人間全てもそう思っているはずだ。





―――ただ劉偉に言わせれば、ウォルフは完璧であり過ぎる。


だから、友として願うのだ。





――――【完璧】であることよりも【人間】であってほしいと。


自分がイリスの存在で幸せを感じるようにウォルフにも幸せな暖かさとその存在意義を感じてほしい。




――――それには優が必要不可欠だった。

そして、それは優にとっても同じことだ。






「――――優、元気かなあ?ウォルフは本部にいるからいいけど、優は応援にいっちゃってるから」



「――――アイツのことだから、さっさと切り上げて帰ってくるさ」




―――寂しそうなイリスの頭に大きな手が置かれる。


イリスは恋人の体にそっと身を寄せた。





「――――イリス」

暖かくて力強い腕に抱かれてイリスはそっと目を閉じる。





――――今は劉ちゃんのことだけを考えよう。


いつまた彼が自分を置いて行ってしまう日が来るかもしれないのだ。






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あきゅろす。
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