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< 捕食者 >
――――外階段の4階が笑い狐の格好の"餌場"だとすれば学園の屋上はさながら狐の"寝床"だった。
青空の下、貯水タンクのてっぺんを陣取って今日も"狐"は日当たり良好なその場所でぐっすりと昼食後のお昼寝タイムに入っていた。
「―――――何度も言ったよな。俺はオマエが好きなんだ。だから、そろそろ返事をくれないか?」
―――餌場でなくても"餌"はある。
聞き覚えのある声に瞳を閉じていた神崎卓の形の良い唇がうっすらと弧を描く。
鼻歌出そうなほどご機嫌な"狐"はそのまま耳を欹てて相手の声を待った。
「―――――ば、馬鹿じゃねぇの。なんでおめぇが俺なんか・・」
動揺を隠しきれない不良の声に卓は腹がよじれそうでたまらなかった。
―――――本当に良い『種』を蒔いて行ってくれた。
もはやニンマリ笑いの止まらない卓の頭の中は"どう遊んでやろう"と次の遊びの裁断に忙しい。
―――テニス部のエースと学園でその名の知れた不良。
目を付けていた二人の青臭い恋の行方は退屈嫌いな"狐"にとって格好の"餌"となる。
神崎卓に比べてまだまだ子供な"いい人"を今後どう料理していくか―――。
―――それは今のところ"笑い狐"に掛っていると言う訳だ。
「――――ベートーヴェン交響曲第5番]
ねぇ、この世は弱肉強食なんだから。
か弱い被食者はあっという間に強い捕食者に食べられちゃうんだよ。
The great fish eat the small.
―――だって、そうゆう『運命』なんだから。
「――――食べちゃうよ、小魚さん」
この学園の捕食者リスト―――そのトップランクに位置する"笑い狐"は今日もそうほくそ笑んでいた。
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