Main < ライフ > ――――消えてった『花』はちゃんと次の『種』を残していった。 紙屋宗助と連れだって食堂にやってきた神崎卓はニヤリと笑った。 いつも通り周囲を遠巻きに見つめられる中、後ろを他人面で通っていく"平凡"のその首に情痕を見つけたからである。 「――――ヒュ――」 突然、口笛を吹いた卓に隣にいた寡黙な男前が不審そうな視線を寄こす。 婀娜っぽい笑みで口笛吹いた学園の色男に食堂の誰もが釘付けになる中、宗助だけが一瞬で逸らされたその視線の先を知ってああと呆れたため息を吐いていた。 ――――どこにでもいる小さな小さな子ウサギさん。 すぐに周りに埋もれてしまうその子ウサギに誰も目を向けることはないけれど、知っている奴は知っている。 その子ウサギの後ろにはタチの悪いドSな教師がもれなく付いているという事実を。 「―――やるねー、悪徳教師」 太い首を巻き込んで下から覗きこんでくる男はその悪徳教師よりずっとずっとタチが悪い。 その悪戯好きの目がなぁと語りかけるから、宗助はたまらず苦笑をもらしてしまうのだ。 ―――――――おまえのとこはどうなんだ。 無言の問いかけに苦虫を噛み潰したような顔で返答した男前を見て、だから卓はクククっと笑ってしまう。 ―――『種』は順調に育ってる。 その『種』のおかげでしばらくは、"神崎卓"の日々も退屈になることはなさそうだ。 「――――Life has its peaks and valleys. 人生はこうでないと」 さて次はどんな『花』が咲くのだろうか。 人生、山あり谷あり。 ―――何もない人生なんてつまらない。 そう1人タチの悪い笑みを浮かべる悪友を寡黙なこの学園の書記が心底嫌そうに見つめていた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |