短編3 黄金色の羽根 黄金色の羽をなびかせて。 その鳥は、空を飛ぶ。 その羽根が一枚抜けて、ひらりと地に落ちる。 羽根は光を帯びていて、眩しく辺りを照らし出した。 羽根を拾ったのはひとりの老婆。 羽根は閉じ込められて、必要な時だけ取り出された。 闇を祓う灯りとして、羽根は使われる。 そのうちに、美しい羽根は話題を呼び、噂として流れ出す。 ある日、とある若者がその羽根を尋ねてやってきた。 「その羽根をわたしに譲って下さい」 そうして羽根は再び飛び立つこととなる。 けれどその先でも、羽根はとらわれたままだった。 羽根は所有物である。 羽根は愛玩物である。 羽根は檻の中で。 羽根は鎖につながれて。 羽根は主の望みの通りに。 羽根は逆らうことなく。 やがて羽根は懐かしい過去を思い出して、ひと粒のしずくを零す。 まだ、羽根が温かく優しい場所の一部であり、そこから離れる前のこと。 羽根の涙はひとつの命となった。 羽根から生まれたそれは、鳥となって空を飛ぶ。 その日、何人もの人間が黄金色の美しい鳥を見た。 気高いその姿に感嘆の声があがる一方で、羽根は地に伏して静かに消えてゆく。 *前次# |