■ ─冬樹side─ あの人は、声をかけてからなぜか横に座るようになった。 別に待ってんだからそれで普通だと思う。 でもなぜか、 その人が座るのを確認する俺がいた。 そして今日、連れ出された。 引っ張られた腕と首が苦しかったけど、殺されるわけじゃなさそうだったから。 何かシカトとか言ってたけど、 そこらへんはよく分からない。 まぁどうでもいいから気に留めなかったけど。 そしたらあの人、 朱雀っていうんだってさ。 なんでそんなに名前聞きたがるかな…。 「あら冬樹、今日はちょっと遅かったわね。それに見当たらなかったけど…」 「別に。外にいただけ」 「まぁ外!?そう…それはいいことだわ」 「そう、良かったね」 中にいても外にいても、 何かが変わる訳じゃないのに。 もうすぐ死ぬんだから、 どこにいても同じじゃん。 「なら時間が分からないものね。明日腕時計を持ってくるわ」 「うん」 そんなもの、いらないのに。 だって……… あの人と会う予定はないんだから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |