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「…なぁ、今日は航も洗ってくんね?」
「えっ…あ、うん…」
「力強めでいいからなー」
「へ、下手だったらごめんね」
「何いってんだよ、航にしてもらうことに意味あんだよ」
クツクツと笑う。
……何度、勤のことを好きになろうとしたか。
だってほら、好きになって勤に墜ちちゃえば、今の生活も嬉しいだけのものに変わるでしょ?
けれど、どうしても好きになることはなかった。嫌で嫌で、嫌悪しか湧いてこなくて。
でも怖くて2年近くもこのままだ。いっそ、好きになれたら楽なのに…。
「………おい、航」
――ビクッ
「っ、…な、なに?」
「手が止まってる。…何考えてた」
「な、にも…えと、ほんとに何もっ」
「………」
ブルブルと体が震えだす。
怖い。無言で僕の答えを待つ勤が、とてつもなく怖い。
慎重に言葉を選ばないと、今日は寝かせてもらえないかもしれない…っ。
――…ゴクッ
「い、…いつ見ても、勤の金髪は似合うな…って…思ってたよ…」
「……、そーかそーか、だろ?航も染めっか?」
「えっ?ぼ、僕はいいよぉ…」
「だな。その綺麗な髪、痛めつけることもねぇし」
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