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握ったこの手を(フラン)日記ログ









 フランは手のひらの中の温もりに目を落とした。


 ・・
 それはフランを見上げ、全てを見透かすような、無垢で黒い瞳を、無言で向け続けている。


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」


 数秒見つめ合う。先に痺れを切らしたのはフランの方だった。


「センパーイ。ベルセンパーイ」
「あー?なんだよ」
「何でー、ミーが子守りなんてしなくちゃなんないんですかー?」


 元から気抜けた声をさらにげんなりさせているフランに、ベルは寝そべっていたソファーから身を起こした。
 そこには無表情の子供が二匹、見目だけは仲良く手を繋いで佇んでいた。


「仕方ねぇだろ。ナマモノ係のスクアーロとルッスーリアが任務でいねーんだから」
「・・・ちっ、役立たずめ」


 端的な説明にフランは心から盛大な舌打ちをした。飴玉の如く円らな黒い目が未だ自分を写しているのを感じながら、再度ベルに訴えかけた。


「ミーじゃなくたってー適任な人がいるじゃないですかー」
「・・・例えば?」
「例えばー、レヴィさんとかー」
「情操教育上よくねぇだろ」
「ボスとかー」
「おまえソイツになんか怨みでもあんの?」
「ないですけどー・・・」


 ソファーの背もたれに両腕を組ませて、もたれるように顎をのせたベルがフランを責めたてる。豊かな前髪で隠れている瞳が、じっとりとした視線を向けているのがわかった。
 あの、暴れん坊のボスに子守りなぞ。3秒ともたずに消し炭にされてしまうだろう。


「センパイは・・・」
「オレは他人の世話なんてしないぜ?だって、王子だもん」
「この堕王子が」
「ししっ、てんめーぶっ殺す」


 意味わかんねぇよ。と、切々と訴えかけるフランにベルがナイフを構える。



 じー。



「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」



 が、すぐにしまう。



「・・・ミー、子供って苦手でー」
「自分だって子供のくせに」


 てか、オレも好きじゃねぇし。と、ベルは柔らかなソファーに座り直した。
 ベルとの会話の間もその小さな生き物はフランに視線を注いだままだった。何一つ見逃さないとでもいうように見つめられるのは正直言って居心地が悪い。


 ふと、小さく腕を引かれて、フランは視線を落とす。夜空よりも深い闇色がやはり自分を見つめていた。


「?」


 軽く身を屈めて覗きこめば、その黒い生き物が小さい口を小さく開くのが見える。
 聞き取り易いようにか、小さな踵を持ち上げて背伸びをするナマモノのために、フランは座りこみ視線を合わせてやる。



「ぼくはじゃま、ですか?」


 その視線には疑心も批難もなく、あくまでも純粋な問いかけだった。



「邪魔じゃーないですけどー・・・」



 どうすればいいのか、わからないのだ。



 今まで、他人を世話したこともなければ、気遣ったこともないのだ。ましてや、年端も行かぬ幼子など。

 ただ幸いなのは、幼子が感情豊かではないことだろうか。今も邪険にされているというのに、小さな生き物は悲しみも怒りもしない。
 人のことは言えないが、かなり子供らしくない。感情が無さすぎて戸惑う程だ。



「まぁ今日は寒いですしー」



 子供にどう接すればいいのかは、やはり皆目見当もつかなかったが。



 握り直した手袋越しに感じた暖かさが、自分の手を握り返すのを感じて。



 とりあえず。



「暖房代わりくらいにはなるんじゃないですかー?」







 ったこの
 (離さなければいいのか、と思った)









日記に掲載していたのを移動。
同盟に参加した記念に書いたものです。
所要時間は20分とかからなかった超安産でした。


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あきゅろす。
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