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企画部屋
乱藤四郎の話
乱藤四郎は少女と見間違えるほど可憐で、審神者あるあるの「性別を間違える系男士」だ。短刀と言えど刀、戦場での活躍も申し分ない。
死織本丸の彼は、やや沸点が低いようなのだが。

主様は、大切な人。ボクを暗闇から救ってくれた恩人。
だから、傷つける人は許さない。傷つけるものも許さない。
――たくさん傷ついた主様が、これ以上傷つく道理なんてないから。

「――『貫け、緋き刃。その鋭さは憎しみの如く』」
その言葉を聞いた時、比喩ではなく背筋が凍った。目の前の脇差を斬り捨て振り返れば、主様が検非違使と対峙していた。
主様の刃物がきらめけば、緋色の刃が薙刀を両断する。次々に検非違使を葬り、主様は刃を納めた。
「っ、主!!」
最後尾の獅子王さんが主様に駆け寄る。それにつられるようにして、全員が集まった。
主様は難しい顔をして、周囲を伺っているようだった。
「主、ごめ」
「しーさん、謝罪はあと。第2波が来る、構えて!!」
『!!』
号令に従い、主様を背にし輪になって構えを取る。衣擦れのあと、ボクの嫌いな音が響いた。
ぢぎぢぎぢぎっ!!
同時に検非違使の別部隊が出現し、ボクは地を蹴った。

どれだけ圧迫しても止まらない赤。それを目にしたみんなが問答無用で帰還し、主様は薬研兄さんに連れられ行ってしまった。また、傷口を縫うんだろう。
―――ボクは、まだ弱い。
出来ることはまだ少ない。主様に負担をかけているのも、解ってる。……それでも。
傍らに在ることが支えになると、知っているから。隣で笑っていることが幸せだと、知ることが出来たから。
主様が゙家族゙と、゙弟゙と呼んでくれるその声を、失いたくない。なくしたくない。だから、………もっと、強くなりたい。
「悩んでおるな、乱」
「三日月さん」
夜、1人縁側で月を見上げていた。そんなボクの隣に、三日月さんが腰かける。
三日月さんは、なんでもお見通し。隠し事なんて出来やしない。だからボクは話すことにした。もっと強くなりたいという、ボクの願いを。
「そうさなぁ、」
目を細めて、三日月さんは口を開く。
「主ほどは、強くなれんよ」
「……知ってる」
「強さにも、限界があろう」
「……うん」
「その上で強くなりたいと願うならば、」
まっすぐに、瞳に浮かぶ三日月がボクを射抜く。
「『なんのために強くなるのか』を、定めよ」
「………ボクは、」
なんのために。
誰のために。
強くなる理由は。
「主様と共に在るために、強くなりたい」
「―――それならば、俺も手助けしよう」
三日月さんは、ゆったりと微笑んでくれた。

あのね、主様。
ボクは、強くなるよ。
あなたと共に在るために、強くなるよ。
ボクはあなたの゙家族゙で゙弟゙だから。

―――ボクは主様の、゙弟゙第1号だからねっ!!


     


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あきゅろす。
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