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企画部屋
万屋へ行こう・神刀組となりそこない編
「最後はアタシ達だね!」
「次郎、徳利を振り回してはいけません」
「俺神刀でいいの?」
「神社に奉納されていたからいいんじゃないかな?」
(カオス!!)

その日、万屋の前に立っていたのは、太郎太刀、次郎太刀、蛍丸、にっかり青江、そして彼らの主たる死織だった。「最後はたろさん達とだね!」と満面の笑みを向けられた結果である。燭台切に渡された買い物メモを見ながら死織は歩いていた。
「主、前を見ないと危ないよ?」
「うぃー」
青江がたしなめるが、死織は生返事で返す。
それに彼が苦笑をこぼすと、不思議そうな瞳が青江を見上げた。
「なーに?」
「………主って本当に可愛いよね!!」
いつも通りに青江は発狂する。またか、と他3人は呆れた視線を向けただけだった。さもありなん。
蛍丸と手を繋いだ死織は青江を気にすることなく先に進んでいく。大太刀3人がそばを通るたび、ぎょっとしたような視線が死織達に向けられた。
「お買い物済んだら、いつもの甘味処でお土産を買おうと思うの。いい?」
「よろしいですよ。荷物は持ちましょう」
「俺も持つよー」
「ふふ、そんなに量はないから大丈夫だよー」
くすくすと笑う死織を見て、彼らも柔らかく笑みを浮かべる。あの頃とは違う、穏やかな日々を過ごせていることを心から嬉しく思う。それと同時に、自分達を受け入れてくれたのが死織でよかったとも思うのだ。
きっと彼女でなければ、ここまで穏やかな気持ちにはなれなかっただろうから。
「ん?………お」
ふと、死織が足を止める。その視線を青江達が追えば、今にも泣きそうになっている五虎退の姿があった。
「………はぐれたね」
「そのようです」
「どうする〜、主ちゃん?」
次郎が問いかけるが、面白そうに笑っている辺り、予想はついているのだろう。太郎はそんな弟を見て、苦笑する。
死織は答えず、すたすたと五虎退に近付き声をかけた。
「もしもし、そこの君」
「ひゃい!?」
引っくり返った声を上げ、五虎退は振り返る。おどおどと死織を見上げるが、その顔は今にも泣きそうだ。
「どうやら君、自分の審神者とはぐれたと見える。ここはどうだろう、俺と一緒に捜すと言うのは」
「………え?一緒に、捜してくれるんですか?

「君みたいな子供を放っておけるような鬼がいたら会ってみたいものだ。大丈夫、怪しい者ではない。俺は審神者の死織と言う。君は五虎退くんで間違いないかい?」
「は、はい。僕は五虎退です」
「では主の名前はわかるかい?今日どんな服装をしているかも教えてくれると助かる」
その後、死織が聞き出したところによると、
審神者名は牡丹、髪は黒髪ストレートで背中の真ん中辺りまで。若草色の着物を着ていることがわかった。
死織は最後にそれらをもう一度確認し、大きく頷いた。
「そこまでわかれば大丈夫だ。じゃあ行こうか、きっと主も君を心配しているだろうから」
スッと差し出された手を五虎退は驚いたように見つめ、それからおずおずと自分の手を重ねた。

―――離れないように手を繋いでいたかった。
この手からすり抜けないように、握り締めていたかった。
独りぼっちは………嫌、だなぁ。
「……………」
例えばこの往来で俺が彼らとはぐれたとして、きっとすぐに泣き出すことだろう。おそらく声がかけられたことも気付かないくらいに平常心を失い、取り乱しているに違いない。
「五虎退くん、君は強い子だね」
「………僕は、まだ弱い……です」
「そういう意味じゃないよ。よく泣くのを我慢したね、君は芯の強い子だ」
そう、短刀達は見かけよりもずいぶん年を食っている。それゆえに心の中には一本の芯が通っているのだ。それは、「泣き虫」だと呼ばれる彼も同じこと。
「君達短刀は本当に強いと思うよ。俺の憧れだな」
「お姉さん、は………優しい人だと思います」
「ふふ、よく言われる」
主に゙お兄ちゃん゙達に言われていますが、
本人に自覚はあまりなかったりする。ちなみに蛍くんば弟゙扱いである、外見的に。
五虎退くんの歩幅に合わせ、ゆっくりと往来を歩く。それっぽい人に声をかけ確認しながら進んでいると、視界の端に女の人が映った。
若草色の着物、黒髪ストレート。心配そうな表情で、お店の中を見回している。
………おそらく、この人だ。五虎退くんをつつき、その人を指差す。振り向いた五虎退くんの目が見開かれた。ビンゴ。
彼の手を引き、その人へと近付いて声をかけた。
「もしもし、そこのお姉さん」
「え?は、い………」
振り向いたお姉さんは、先ほどの五虎退くんのように目を見開く。俺はにっこり笑って、五虎退くんの背中を押した。
「貴女が牡丹さんで間違いないですか?」
「はい、私の審神者名は牡丹です」
「こちらの五虎退くんが困っていたので、
一緒に捜していました。見つかってよかったです」
「すみません、ご迷惑をおかけしてしまって……五虎退、怪我はない?」
「はい!大丈夫です、主様!……お姉さん、ありがとうございました!!」
頬を上気させて話す五虎退くんを見て俺は笑う。何かお礼を、と言う牡丹さんには、それなら彼らを大事にしてあげてほしいと言えば、本当にありがとうございますと頭を下げられた。
手を繋いで帰って行く2人を見送り、俺は青さん達へと振り返る。
「じゃ、俺達もお土産買って帰ろうか」
「はい、主」
「そうだね、帰ろう」
「帰ろっか」
「主ちゃん、だっこしてあげるよ」
断る前にじろさんに抱き上げられる。拒否権はいずこ。……まぁ、いつものことだし、
いっか。
―――゙家゙へ帰ろう。あの、ぬくもりが溢れる俺の居場所へ。俺の大切な゙家族゙がいる、
あの゙家゙へ。

こうして、死織の1ヶ月にも及ぶ外の世界の探険は、終わりを告げたのだった。

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