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企画部屋
万屋へ行こう・三条組編
「あ、そうだ。グループを決めて、代表者の名前を書いてあみだくじ、なんてどうだろう?

新しいお供の決め方に嬉々として彼らは乗り、結果、三条組がお供に決まったのだった。

三日月、小狐丸、岩融、石切丸、今剣は、うきうきと往来を眺める主を見て和んでいた。
自分達の主マジ天使。
今回はお使いではなく、死織自身の欲しいものがあるということで雑貨屋に来ている。彼女は髪紐が並んでいる棚の前でふと足を止め、小狐丸を見た。
「?ぬしさま、なんでしょう?」
「………んー」
まじまじと小狐丸を見た後、死織は棚に向き直り腕を組む。しばらくそのままの体勢で考え込み、1つの髪紐を手に取り店員の方へ。
「はい、こぎさん」
「………はい?」
支払いを済ませた髪紐を目の前に差し出され、小狐丸は首を傾げる。死織は少しむっとして、彼の手を取り髪紐を握らせた。
「畑仕事するとき、髪邪魔でしょ?」
「そうですが……え?」
「目の色よりも薄いけど、それくらいが髪には合うと思うよ。よかったら使って?」
ぽかんとした後、小狐丸は髪紐を見つめる。
「………もったいなくて、使えませぬ」
「物は使ってこそでしょうよ。俺はその髪紐つけたこぎさんが見たい」
「明日から早速!」
(ちょろい)
自分で言っといてなんだが、こんなちょろくていいのかと死織は思った。思ったが、嬉しそうにする小狐丸を見てまぁいいかと思い直した。
ちなみに、嫉妬の視線を向けられて小狐丸は内心冷や汗だらだらだったりする。
今剣はぷぅと膨れ、死織に駆け寄って手を繋いだ。
「あるじさま!ようけんはなんですか?」
「んー?ああ、お守りをね、買いに来たの」
「………おまもり?」
「そ。………みんなが折れてしまうのを一回だけ防いでくれるお守り」
その言葉に、彼らは息を飲んだ。こんのすけから聞いてね、と歩み出しながら死織は話し出す。
「そんなものがあったんだって思ってさ。とりあえず、出陣する人数分は買わないと、と思ってさ」
使い回しになっちゃうけど、ごめんね?
申し訳なさそうに笑う死織に、今剣はぶんぶんと首を振る。ぎゅぅっと手を強く握り、
唇を噛み締める。
(なきたいのは、あるじさまのほうだ)
だからここで自分が泣くのは間違いだと、
今剣は己に言い聞かせた。
誰よりも、何よりも、自分よりも刀達を優先する死織だから。゙家族゙が消えることを、何よりも恐れる死織だから。
「主は、優しい子だね」
ことのほか優しげな、それこそ兄のような眼差しで、石切丸は死織を見る。本人はきょとんと瞬き、苦笑した。
「これは俺の自己満足だよ。それ以上でも以下でもない」
「でも、君が優しい子であるのは事実だ。人はね、追い詰められている時ほど自分のことしか考えなくなるものだよ」
「………あーあ、神刀には何もかも筒抜けですか」
けらけらと笑う死織を見下ろし、岩融が唇の端を吊り上げる。
「主よ。その想いを阻む障害、俺がすべて薙ぎ払おう」
「おうよ。頼りにしてるぜ、岩さん!」
にっこりと笑う死織につられるように、彼らもまた、笑みを浮かべた。

俺は突然の目眩を起こし、後ろに倒れかかる。すんでのところでルナさんに受け止められた。………値段、調べてくればよかった。
「そうだよな、普通に考えれば折れるのを回避なんて効果がついてるならそりゃ高価だよな……。少し考えればわかったじゃん、俺馬鹿だわ」
今も昔も馬鹿ですが、ここまでお馬鹿さんだったとは。自分が自分で信じられない。マジで。
「あるじさま、しっかりしてください!」
「おお、意識はあるで今くん。だから泣きそうな顔せんといて」
短刀ちゃん達に泣かれると辛いものがある。君らを泣かせるのは本意ではないんだ、だから泣かないでくれ。
ルナさんにお礼を言って両の足で地面を踏みしめる。懐からお財布を出し、中身と値段を比べた。………んー、3つは買える感じ?また今度来た時に残りのお守りは買おう。
というわけで。
「おじさん、このお守り3つ下さいな」
「はいよ」
渋いおじさんにお守りを渡し、会計を済ませる。わー、万札が数枚飛んでった。思わず乾いた笑いを漏らし、袋に入れてもらったそれを大事に抱える。………これで。
3人は、確実に守れる。
いずれ全員分買おう、と心に誓い、俺は笑顔で後ろを振り向いた。彼らも、俺に笑顔を返してくれる。
大事な大事な゙家族゙。誰1人として欠けさせない。欠けさせて、なるものか。

「主が………尊い……………」
「主君が、貴い」
「大将に惚れた」
「主様に惚れ直した」
「主殿が愛しい」
「つまり、天使だ」
結論:死織の刀達はいろいろと手遅れ。
三日月達からお守りの話を聞き、涙を流しながら彼らは口々に主を称えた。最後のセリフは誰か、押して知るべし。
ちなみに、死織は「ちょっとお守り隠してくる」と自室に直行した。つまりお守りのことは秘密なのだが、そんなことはお構いなしである。それよりはこの感動を分かち合いたいらしかった。
悶えすぎて息をしているかわからなくなった青江など放っておき、彼らは涙を拭って笑う。嬉しくて、感謝してもしきれなくて、
それでも笑う。それを主は、望むから。彼らが笑顔でいることを、心の底から望んでいるから。
「みんなー。今日のおやつは練りきりにしてみました」
可愛いのいっぱいあるよーと言いながら部屋に入って来た死織の笑顔を見て、彼らは幸せそうに破顔した。

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