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異能審神者の憂鬱
ご対面!
刀剣悶える事件があったが、あっという間に過ぎた一週間。朝っぱらから死んだ目だった死織は、今は遥か遠くを眺めるような目をしていた。
……………どうしてこうなった。
「本気で死にたい。首吊ろ」
「そんな気軽に自殺方法言わないでくれる!?」
燭台切が素早くツッコむ。が、乾いた笑いを浮かべる彼女を見て、何か言いかけた口を閉じた。そして彼は、殺気のにじみ出る広間の障子を見やる。
先ほど死織が呼びに来て、ぞろぞろと刀剣全員を引き連れてこの前に立った。そうしたらこの殺気である。
どうしてこうなった。
死織はため息をつき、さりげなく両隣に立った倶利伽羅と同田貫の背中をぽんと叩く。
「ケンカはダメよ?お2人さん」
じゃ、開けます。
そう言って障子に手をかけて―――勢いよく開いた。

スパーンッ!と小気味いい音を立てて障子が開け放たれた。思わず呆気に取られた俺達の前で、女は腰に両手をやって得意気に笑った。
「どうだ、驚いたか!」
ドヤ顔で胸を張る彼女の後ろで、誰かが「やると思った………」と脱力した声で言った。その声にますます口角を吊り上げて笑うと、警戒する様子もなく室内に足を踏み入れた。
すたすたと俺の前まで進み、にっこりと笑う。
「初めまして、審神者です。いろいろ思うところはあるだろうけど、しばらく出陣とかさせないんで内番でもしてゆっくりしててよ」
慌てて彼女の後を追って来た刀剣達の中に見知った顔を見つけて目を瞠る。審神者の発言にも驚いて、さっきから驚きっぱなしだ。深呼吸して、改めて目の前の女を見つめる。
「俺達は、君に従うつもりはない」
「わかっとるがな。従わせるつもりはないで?」
苦笑して、こてんと首を傾げる。いまだ幼い、けれど子供ではない女。
―――また、女か。
ここにくる前に聞いた岩融の声が耳の奥に甦る。思わず拳を握り、口を開いたその時。
「てか、従ってもらっちゃ困るんよ」
『………は?』
俺達も、あちらの刀剣も、見事な間抜け面で彼女を見る。その審神者は、実にいい笑顔を浮かべていた。
「1回くらいは、殺しに来てもらわんと。楽しくないやん?」
息を飲む俺達になど気が付かないかのように、楽しげに笑って彼女は続ける。
「他殺志願で自殺志願だからね。自殺は禁止されてるんで、誰かに殺してもらわんと。期待してんよ、鶴丸国永さん?」
無邪気な笑顔で言いたいことを言うと、短刀の1人に俺達の案内を頼んで部屋から出て行った。

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