５
「…ドンマイ、だな椎名。ならここへこい。ネットで注文出来るもんはしてやる」
「ぁ…っ、(うん！)」
「ふっ…クリスマス、か…」
「…っ、…？」
そう小さく呟いた智春は、どこか寂しそうな表情を浮かべ、外を見つめた。紅葉はその表情を誰よりもよく知っている。誰か大切な人を思い、感傷に浸っているときの顔だ。
どうして、なんで、寂しい、悲しいよ。そんな思いが心にキューッと伝わってきて、紅葉も辛そうに顔を歪める。慰めたいのに、そんな言葉、一言も浮かんでこない。
「……おいおい、なに椎名が泣いてんだ」
「っ…ひっく、ふ…っ」
「はぁ…、…２年前のクリスマスなんだ。四季が…この世で一番大切だったやつが死んだのは」
「ぁ…っ、ふ、っ…」
「病気でな、分かっていたことだったが…医者として、ずっとそばにいた者として、やるせない気持ちでいっぱいだ。今も、この時期は好きになれねぇ」
あの日の、あの幸せそうな顔は、今でも忘れられないと智春は呟く。なぜ死を前にして微笑んでいられたのか。こんなにも、こんなにも悲しい思いを自分はしてるというのに。
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