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──キッ
『……おお、ここやここ』
「ホンマ…なんですね…」
『んな冗談おもろないやろ。笑かすんやったらもっとちゃうことゆうとるわ』
「す、すいやせん…」
車からおり、目の前の病院へ向かう足は決して軽いとはいえない。この青年──椎名若葉は組長に見つからないようこっそりと、だが盛大にため息をついた。まさか組で子育てをさせられるなんて…と。
(つか子育てってワイが育てるん!?子守とちゃうのっ!?)
正直いえば断りたいし、バカにだってしたくなるほどだ。だが表の世界を捨て、裏の世界に入りたいと願ったのは自分であるため、組長に逆らうことは出来ない。
若葉は気合いを入れ直すため、金のオールバックをもう一度整え、組長のあとに続いた。
『こちらの子になります』
『ほぉ、男やないか。変な気ィ使わんでようなるで』
「はぁ…」
『名前はなんていうんや?』
『それが…ついて、ないんです。お乳を飲むことすら叶わなくて…』
(生まれたてでしかも名前ナシかいな…)
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