3 ──キッ 『……おお、ここやここ』 「ホンマ…なんですね…」 『んな冗談おもろないやろ。笑かすんやったらもっとちゃうことゆうとるわ』 「す、すいやせん…」 車からおり、目の前の病院へ向かう足は決して軽いとはいえない。この青年──椎名若葉は組長に見つからないようこっそりと、だが盛大にため息をついた。まさか組で子育てをさせられるなんて…と。 (つか子育てってワイが育てるん!?子守とちゃうのっ!?) 正直いえば断りたいし、バカにだってしたくなるほどだ。だが表の世界を捨て、裏の世界に入りたいと願ったのは自分であるため、組長に逆らうことは出来ない。 若葉は気合いを入れ直すため、金のオールバックをもう一度整え、組長のあとに続いた。 『こちらの子になります』 『ほぉ、男やないか。変な気ィ使わんでようなるで』 「はぁ…」 『名前はなんていうんや?』 『それが…ついて、ないんです。お乳を飲むことすら叶わなくて…』 (生まれたてでしかも名前ナシかいな…) [*前へ][次へ#] [戻る] |