3
思いっきり弾いたおかげで流れ出た汗を拭う姿は2人とも様になっており、改めてランクの上位者だということを思い知らされる。…が、あいにくそこには2人だけ。いつもはうるさい声もなく、各自その時間を有意義に過ごしていた。
「あっちぃー…水でエエー?」
「あ゙?せめて麦茶にしろ」
「ほいほい。ちーと待っててや」
「…はぁ、当日の体育館はどうなるんだか…」
チッ、と文句をいいながら窓を開け、涼しくなった風を熱気の籠もる生徒会室に入れる。そのまま窓の外を眺めていた桐だが、あるものを見つけ、ピクリと体が動いた。
(っ…あいつら…!)
「チッ、…くそっ」
「はら?桐チャンどこいきはるんー?」
「っせぇチャン付けすんじゃねぇ!」
「……ははーん、トイレやな」
血相を変えて出て行く桐を、椿はそう解釈した。いや、それしかないと思ったのだ。いつも冷静で、自分のことだけを考えて周りに命令を出す側だからこそ、トイレを我慢していたとしか考えられない。
しょうがないな、と呆れて椿は自分のお茶を飲み、桐を待つことにした。そのときだ、静かな部屋に携帯の着信音が鳴り響いたのは。
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