面影を重ねて
紅葉は赤くなった顔と、恥辱で少し潤んでしまった目を隠すために慌てて紅茶を口にした。
それからは細心の注意を払って、ケーキを食べ進めた。ただ、場所が場所。ときおりフォークをくわえたままチラチラと桐に目をやり、目が合えば慌ててそらす、の繰り返しをしていた…。
(チッ、一々見てんじゃねーよ)
(こら…もしかしたらもっとオモロいことなるかもな…)
◆
──テテテ、
「(ポンポンッ)」
「……ん?あ、紅葉くん、終わったの?」
「(コクッ!)」
「ふふ、ありがとー助かりましたっ。ほんとね、いっつも一葉か菖蒲くんがやらされてて。そういうとこ後輩2人には見習ってほしーよねぇ」
「えー三葉チャンかてやってないやん」
「三葉はいーの。だって兄弟だもんっ」
「ねーっ」
可愛らしく首を傾げて微笑みあう2人。紅葉は一人っ子なためそこらへんはよく分からなく、一葉の横でパチパチ、と目を瞬かせた。
みんな仕事で忙しいだろうという配慮で、先ほどまで使っていた食器を紅葉が片付けていたのだ。
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