面影を重ねて 紅葉は赤くなった顔と、恥辱で少し潤んでしまった目を隠すために慌てて紅茶を口にした。 それからは細心の注意を払って、ケーキを食べ進めた。ただ、場所が場所。ときおりフォークをくわえたままチラチラと桐に目をやり、目が合えば慌ててそらす、の繰り返しをしていた…。 (チッ、一々見てんじゃねーよ) (こら…もしかしたらもっとオモロいことなるかもな…) ──テテテ、 「(ポンポンッ)」 「……ん?あ、紅葉くん、終わったの?」 「(コクッ!)」 「ふふ、ありがとー助かりましたっ。ほんとね、いっつも一葉か菖蒲くんがやらされてて。そういうとこ後輩2人には見習ってほしーよねぇ」 「えー三葉チャンかてやってないやん」 「三葉はいーの。だって兄弟だもんっ」 「ねーっ」 可愛らしく首を傾げて微笑みあう2人。紅葉は一人っ子なためそこらへんはよく分からなく、一葉の横でパチパチ、と目を瞬かせた。 みんな仕事で忙しいだろうという配慮で、先ほどまで使っていた食器を紅葉が片付けていたのだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |