14
ただそれだけが頭の中をグルグル回って、声が枯れるんじゃないかってくらい叫んだ。
名前を呼ぶこの人…キングから逃げようともがいて。
そう、キングだ。紫烏じゃない。紫烏じゃないけど、コイツも危険だ。
「助けて…ぇっ」
お願い辰巳、早くきて。
そう願うと、それが届いたのか辰巳の声がした。
でも辰巳に触れられるのも怖く、隅にうずくまっていると、目の前にはあの可愛らしいイルカが。
ふーっと一気に力が抜け、瞼が重くなってくる。
「ゆっくり、休め…」
「ん…っ」
ああ、良かった。
あなたの声は、ちゃんとオレに届くみたいだ。
とても安心するその声に導かれ、オレはあっという間に眠りについた。
…いや、現実から逃げるため、気を失わせたんだ。
◆
「……ん゙…っ」
喉の痛みに目を覚ます。
外は暗く、夜目がきかないためフラフラしながら電気をつけた。
あまりの眩しさに目を手で覆い、少しずつ慣らしていく。
一番始めに目をやった時計の短針は、2を少し過ぎたところだった。
午前2時すぎ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!