14 ただそれだけが頭の中をグルグル回って、声が枯れるんじゃないかってくらい叫んだ。 名前を呼ぶこの人…キングから逃げようともがいて。 そう、キングだ。紫烏じゃない。紫烏じゃないけど、コイツも危険だ。 「助けて…ぇっ」 お願い辰巳、早くきて。 そう願うと、それが届いたのか辰巳の声がした。 でも辰巳に触れられるのも怖く、隅にうずくまっていると、目の前にはあの可愛らしいイルカが。 ふーっと一気に力が抜け、瞼が重くなってくる。 「ゆっくり、休め…」 「ん…っ」 ああ、良かった。 あなたの声は、ちゃんとオレに届くみたいだ。 とても安心するその声に導かれ、オレはあっという間に眠りについた。 …いや、現実から逃げるため、気を失わせたんだ。 「……ん゙…っ」 喉の痛みに目を覚ます。 外は暗く、夜目がきかないためフラフラしながら電気をつけた。 あまりの眩しさに目を手で覆い、少しずつ慣らしていく。 一番始めに目をやった時計の短針は、2を少し過ぎたところだった。 午前2時すぎ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |