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『はい、つきましたよ』

「ああ、どうも」

『全部で…』



辰巳が支払いをしてくれるのを、車をおりてボーッと眺める。

終わって辰巳もおりてきて、つい距離をとってしまった。
ハッとしたときにはもう遅く、辰巳は前を歩いていってしまう。



「ご、めん…」


「………ああ」



声は怒っていない。
……とても、悲しんでる。
けれどオレを気遣って我慢している、そんな感じ。


だってだって、こんなにも歩くスピードが遅い。

荷物だって持ってくれている。

何があってもいいように、右手を空けて周りに気を張ってくれている。



ああ、なんて優しいんだろう。
なんてかっこいいんだろう…。



「………どうする?」


「……え、えっと…何が?」


「前田が怖いなら俺の部屋くるか?それとも…自分の部屋の方が落ち着くか?」


「ぁ…あー…自分の、部屋…」


「っ…そう、か」



……ああ、また、選択を誤ってしまった。

違う…辰巳が悲しむのを分かっていて、こっちを選んだんだ。
しばらく1人で冷静になりたいのと、辰巳の部屋は…辰巳がいすぎて逆に怖くなるから。



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