4 『はい、つきましたよ』 「ああ、どうも」 『全部で…』 辰巳が支払いをしてくれるのを、車をおりてボーッと眺める。 終わって辰巳もおりてきて、つい距離をとってしまった。 ハッとしたときにはもう遅く、辰巳は前を歩いていってしまう。 「ご、めん…」 「………ああ」 声は怒っていない。 ……とても、悲しんでる。 けれどオレを気遣って我慢している、そんな感じ。 だってだって、こんなにも歩くスピードが遅い。 荷物だって持ってくれている。 何があってもいいように、右手を空けて周りに気を張ってくれている。 ああ、なんて優しいんだろう。 なんてかっこいいんだろう…。 「………どうする?」 「……え、えっと…何が?」 「前田が怖いなら俺の部屋くるか?それとも…自分の部屋の方が落ち着くか?」 「ぁ…あー…自分の、部屋…」 「っ…そう、か」 ……ああ、また、選択を誤ってしまった。 違う…辰巳が悲しむのを分かっていて、こっちを選んだんだ。 しばらく1人で冷静になりたいのと、辰巳の部屋は…辰巳がいすぎて逆に怖くなるから。 [*前へ][次へ#] [戻る] |