12 「カゴ貸せ」 「あ、ありがとうっ。んーと…トマトとパプリカ…」 「相変わらずシャレたもん食うんだな」 「シャレ?そうかなぁ…」 そんなことはないと思っていても、見た目からしてもう綺麗だ。色とりどりの野菜を使ったり、オリジナルソースを作ったり。…遙香が作ったというだけで十分美味しいのだが。 知ってる人がいない所で彰鬼たちといる場合、遙香は白のままだ。だから余計人の目を集め、彰鬼は周りに睨みをきかせる。遙香の知らない所で何人の人が血祭りにされてきたか…。 「付き合ってくれてありがとね」 「いや、なんかあったらすぐ呼べよ」 「うんっ、バイバーイッ」 (あーやっぱ可愛いわ) 歩くと揺れる黒髪、小ぶりのお尻。遙香が家に入るまで見送っていると、最後に彰鬼の方を振り返って笑った。細められる目は可愛さよりも色気があり、不覚にもドキッとする。 そんなことを知らない遙香はちゃんと鍵を閉め、夕食の準備に取りかかった。今日はパスタだ。赤いチェックのエプロンをして取りかかるそれは、とても手慣れている。こうするようになってもう5年だ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |