9
『陸ちんどうしたの?何か嫌なことあったの?』
何で怒っているのだろうと不安そうに陸の顔を覗く涼。どうしたのかと聞かれ、素直に陸が答える。
「っう、だっ、な…で俺だけ。俺だって涼と一緒、いたい、のに」
途切れ途切れだがしっかりと答える陸に、涼はちょっと違う方向で理解した。みんなと一緒じゃなくて、1人で寂しかったんだと。涼は陸の頬へ手を伸ばし、顔を近づけて目を真っ直ぐ見、
『ごめんね?僕が先生の横に行けばよかったのに…。もう泣かないで』
と言って涙で濡れた目尻に、ちゅっと軽くキスをした。これは父親がよく涼が泣いたときにやってくれたことを再現しているのだが、そんなことを知る由もない陸は顔を真っ赤にして慌てふためく。
「えっ!?涼!?」
『泣き止むおまじない、ちゃんと効いてるでしょ?』
ニコッと優しく笑って手を離す。満足そうな顔をしてカバンをまさぐる涼。キスをされ顔を真っ赤にしている陸に、妬みで陸を睨み付ける周りの人。それだけならよかったのだが、涼の無自覚攻撃はまだ続いていて、
『はいっ』
と言って包み紙から取り出したアメを陸の口元へ近付けた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!