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「…"一"という人をご存知ですか?」
「君…それをどこで…」
やはり、といったところだろうか。理事長は目を見開いて香をみた。よく聞こうと身を乗り出している。
「あ、はい。よくその人と間違わられたり…たまに言うんですが…」
「はぁー…あ、いや…涼ちゃんはまだ起きないかな?」
「「はぐらかさないで下さい」」
「…私の口からは言えないね。叔父ではあるが涼ちゃんまたは家族ではない」
急に真面目な口調になった理事長は念を押すようにみんなをみて、そのまま黙ってしまった。それ以上は何も聞けない。だからといって涼にも聞けない。
何もかもがあやふやになってしまった。ただ一つその場にいた全員が分かったのは、涼は襲われてパニックになったわけではない。少なからずその一という人が関わっているということだ。
みんなが押し黙ってしまったその時、涼の指がピクリと動いた。次第にまぶたがあがっていく。
「「涼!」」
『ん…え…?』
「よかったー…大丈夫?」
涼の目に映ったのは自分を心配そうに見下ろすみんなの顔。いきなりの光景に驚いていると、英士が涼を抱きしめた。
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