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アオソラ

 次の日の朝。
僕はわざわざ青山が電車に乗るタイミングを見計らって、電車に乗り込む。
何時もの朝は、こんなに時間を気にした事はなかった。
同じ電車に乗れなくても、学校で会えると分かっていたからだ。

「あれ、いないのかな……ああ、居た居た」

満員電車の中で、知り合いを見つけると言う事は、こんなにも難しい事だったのか。
暫くキョロキョロと視線を動かして見つけた青山は、何時も通りに黙々と本を読んでいた。その顔は凛々しく、どうにも近寄りがたい雰囲気を放っている。
僕は、さり気なくその横に立ってみるが、青山が放つ空気のせいか何となく、声がかけにくかった。

そうだ、何時もは、青山が真っ先に僕に話しかけてくれていたのか。

意外な事に気づいてしまった僕は、少し情けなくなって下を向く。
青山、僕に気がつかないかな。
そんな馬鹿な望みを持ってみる。逃げたのは僕の方なのに。

 そう言えば、今日はまだ本屋に行っていなかった。
こんな朝は、初めてだ。漫画本以上に、青山の事をずっと考えていたからろうか。
僕は勇気を出して、青山の肩を軽くつついてみる。
反応は、ゼロ。ちょっと悔しくなって、今度は軽く叩いてみる。しかしやはり、反応はなかった。

「青山君おはよう、僕だよ、川島だよ」

小声で話しかけてみても、青山は眉の一つも、ピクリとも動かさない。
ただ黙って、本へと視線を注ぐだけだ。
彼が、こんなにもはっきりと無視を決め込んだ事が、かつてあっただろうか。
僕はここにきて、ようやく自分のしてしまった事が、取り返しのつかない事だったとわかった。

 青山の三歩後ろをついて歩くなんて、まるでストーカーみたいじゃないか。
僕はうじうじした気持ちを振り払う為に、ため息を一つして、彼を、青山を追い抜く様に走り出した。

「……青山、君」

追い抜いた瞬間、もしかしたら気がついてくれたんじゃないだろうか、と小さく思ったけれど、一度動きを早めた足は中々止まってはくれず、僕はそのまま学校へと走りきってしまうのだった。

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あきゅろす。
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