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11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
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コウキは苦しそうな顔をしていた。クウは何か言いたそうな顔で、胸の前でぎゅっと両手を握りしめた。

 「レンは精霊だ」

重苦しい雰囲気の中、空の海の魔女が口を開いた。

 「そのレンが取り込まれているこいつを不安定な場所である次元の挟間で放っておけば、他の世界へ悪影響が出る可能性がある。そうなる前に何とかしなきゃならない」

再び、空の海の魔女は杖を球体に向ける。その先端に光が集まる。

 「やめろ!」

ボクは空の海の魔女の前に立って、両手を広げた。

 「どきな。これは精霊の問題だ。そのバカ頭でも知っているだろう。精霊は司るものをもって、世界を安定させるための存在だ。それを乱すことは許されない」

大地の精霊が大地を育むように、氷の精霊が雪や氷を生み出すように、おかしの精霊がおかしを作るように……精霊は何があっても司るものを守ることを定められていて、それを乱すことも、汚すことも絶対に許されない。

空の海へ行って、精霊のことは教えられた。

レンも精霊だ。世界に悪影響を与えるなら、空の海の魔女が言うことが正しい。

だけど……

 「嫌だ!!」

ボクは叫んだ。

 「レンを消すなんて……レンが消えるなんて、絶対に嫌だ!!」

ありったけの怒りをこめて、空の海の魔女を睨みつけた。

 「お前、すごい力を持った魔女なんだろ! 何でその力を使って、レンを助けようとしないんだ! 何でそんなに簡単に諦めるんだよ!!」

空の海の魔女がレンごど水の球体を消そうとするのは精霊の役目だからなのはわかっている。けど、ボクには諦めているようにしか見えなかった。

空の海の魔女が諦めても、この場にいるみんなが諦めても、ボクだけはレンのことを諦めたくない。

 「ボクは……」

ボクはレンに貝殻を渡したい。

ひどいことを言ったことをレンに謝りたい。

……ちゃんと言えるかわからないけど、レンにボクの気持ちを伝えたい。

こんなにもレンにしたいことがある。

だから、ボクは……

 「……ボクは絶対にレンを助けたい!!」

心からそう願った。その時だった。

突然、身体が光った。

身体の中から力が溢れてくるのを感じる。何だか、身体がものすごく軽い。

突然のことに驚いた。でも、これなら出来るかもしれない。

ボクは走った。

レンの元へ。

思った以上に速く動ける。まるで自分が風になったような感じだった。

また水の触手が襲ってきたが、全部かわして、ボクは走った。

レンの元へ。

ただそれだけを考えて、ボクは水の球体へ向かって走った。

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