11周年記念物語「人魚姫の想い歌」
15
「これは……」
クウたちの案内で向かった先にあったのは次元の挟間の森の上に浮かぶ、大きな水の球体。
その球体の中に人魚姿のレンがいた。
「レン……!」
球体に近づくと、それまでただ浮かんでいた球体から水が触手のように伸びてきて、襲い掛かってきた。
「危ないっ!」
クウがボクを抱いて、横に転がった。
目標を失っても水の触手は止まることなく、ボクたちの近くの木々を真っ二つに切り倒した。
「怪我はありませんか?」
「……うん。あ、有り難う」
ボクの無事を確認すると、クウは立ち上がり、ロッドを取り出して、ボクの前に立った。その隣にナルが並ぶ。
「見てもらった通り、近づこうとするとあんな風に攻撃されるの」
「俺たちも何とかしようとしたんだが……どうやっても無理だった」
カリナは不機嫌そうに水の球体を睨みつけ、アルトは困ったように頭を首の後ろをさすった。
「どうする、リーちゃん?」
ショーコが空の海の魔女に聞く。
空の海の魔女は無表情に球体を見ていた。しばらくの沈黙のあと、
「……消す」
ゆっくりと杖を球体に向けた。
「消すって……まさか……」
嫌な答えが頭に浮かぶ。
「レンちゃんごと、あの水の球体を消すということね」
ショーコさんが冷静に、その答えを言った。
「助ける方法はないんですか!?」
すがるようにクウが聞くが、空の海の魔女は頭を振った。
「……ない。恐らく、あいつはレンを取り込んでいるだけでなく、直接レンとつながっている」
「つながっている?」
「レンの心を捕らえて、レンの力を引き出しているんだ。だから……」
空の海の魔女はその先は言わなかった。
杖を握りしめて、うつむく。その表情はつばの長い帽子に隠れて見えなかった。
「つまり、レンちゃんがあの水の球体の一部になってしまって、切り離すのは不可能……レンちゃんごと消すしか、あの水の球体を消滅させる方法がない。そういうことよ」
空の海の魔女の代わりに、ショーコさんが残酷な現実をボクたちに告げた。
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