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 午後の空き時間を利用して本を読む。
 それが、長谷川真紀の日課だった。

 空き時間の種類は様々で、授業の合間だったり、帰りのバスの待ち時間だったりする。

 どんな空き時間にせよ、真紀は大概大学のロビーで読書をするので、真紀に用事のある人はまず最初にロビーに探しにやってくる。


「長谷川先輩」


 名前を呼ばれて顔を上げると、同時に視界が暗くなった。突然のことに驚いたが、次に聞こえてきた声でほっと肩の力を抜く。


「だ〜れだ?」

「なんだ、卓哉くんか」


 安堵しながら答えると、視界が解放される。すると今度は目の前に顔が覗き込んできた。


「ちぇ、バレバレ」


 言葉自体は不満そうだが、その顔には笑みがあった。
 くりくりとした小動物のような瞳に、オレンジに透けて見えるツンツン頭。
 田川卓哉。真紀の一年後輩で大学二年生。そして、


「だって、卓哉くんしかこんなことしないし」

「しないっていうかさせないの! 先輩は俺の彼女なんだから」


 という関係だ。

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