・2 午後の空き時間を利用して本を読む。 それが、長谷川真紀の日課だった。 空き時間の種類は様々で、授業の合間だったり、帰りのバスの待ち時間だったりする。 どんな空き時間にせよ、真紀は大概大学のロビーで読書をするので、真紀に用事のある人はまず最初にロビーに探しにやってくる。 「長谷川先輩」 名前を呼ばれて顔を上げると、同時に視界が暗くなった。突然のことに驚いたが、次に聞こえてきた声でほっと肩の力を抜く。 「だ〜れだ?」 「なんだ、卓哉くんか」 安堵しながら答えると、視界が解放される。すると今度は目の前に顔が覗き込んできた。 「ちぇ、バレバレ」 言葉自体は不満そうだが、その顔には笑みがあった。 くりくりとした小動物のような瞳に、オレンジに透けて見えるツンツン頭。 田川卓哉。真紀の一年後輩で大学二年生。そして、 「だって、卓哉くんしかこんなことしないし」 「しないっていうかさせないの! 先輩は俺の彼女なんだから」 という関係だ。 [*back][next#] |