・16 「県外の大学ねー。そりゃ確かに難しいかも。遠距離やるほど私体力ないし」 案の定佳奈の意識はそっちに流れた。内心ほっとしていると、佳奈は、はて、と首を傾げた。 「でも、同級生ってことはタメよね? 県外の大学行ったのに、なんであの店でバイトしてるの?」 確かに、言われてみればそうだった。 もうこの街で逢うはずがないと思っていた。だからこそ今日の再会の驚きはひとしおだったのだ。 何か、あったのだろうか。 「さ、さぁね。知らない」 心配に思いつつも他人のふり。元は他人だ。高校が同じだったというだけの話。 真紀は平静を装って答えた。 「ふーん。まぁいいけど。私狙っちゃおうかなぁ」 「…………」 佳奈の言葉に胸がぎゅっとなる。我関せずを貫こうとしたら、逆に怪しまれた。 「あれ? 彼氏いるのにとか言わないんだ?」 「……ぅ」 いつもそうだが、佳奈は痛いところばかり突いてくる。油断も隙も見せられない相手なのだ。 「別に。関係ないし」 「ふぅ〜ん?」 佳奈の視線が痛い。 [*back][next#] |