・12 「久しぶり。元気?」 「う、うん。芳賀くんは?」 「まぁまぁ」 ふっ、と笑う顔。変わっていない。 「バイト?」 「おう。あ、ウィンナーコーヒーふたつ、お待たせいたしました」 営業用の口調で、カップをふたつ、ソーサーに乗せたままテーブルに置く。芳ばしい香りが広がる。 「そっか。頑張って」 「ん。ごゆっくり」 素の笑顔と営業スマイルのふたつを残して、芳賀洋一は厨房に戻っていった。 その後ろ姿をつい見送っていると、正面から視線を感じた。恐る恐る見ると、佳奈が睨むようにこちらを見ていた。 「まーきぃーどういうことぉー?」 男の話が絡むと、佳奈は三割り増しでしつこくなる。それを知っているので、真紀は素直に話し出した。 「高校の同級生だよ。芳賀洋一くん」 「同級生……なぁんだ」 思いの外あっさりした反応に、真紀は訝しげに眉を寄せた。 「だって二人の雰囲気、ただのクラスメイトって感じじゃなかったんだもの。なんかあったのかって勘ぐっちゃった」 [*back][next#] |