・11
何も男好きが悪いというわけではない。
しかし、特定の相手がいるなら、無闇に他の男性と関わりを持たない方がいいのではないかと真紀は思っていた。
「ま、期待外れだったけどー。てなわけで、コーヒー飲んだら帰るわ」
「あぁそう」
もはや呆れ果てて何か言う元気もなくなってきた。真紀は再びため息をついて窓の外に視線を移した。
買い物帰りか、紙袋を持った女の人が小さな子供を連れて歩いている。すぐ近くが住宅街になっているようだった。
ふと窓ガラスに赤いエプロンが映る。さっきの人が注文を届けにきてくれたのかと視線を向けると、そこにいたのはさっきの人とは似ても似つかない若い男性だった。
少し長めの黒髪の間から、切れ長の目が覗いている。整った顔立ちと顎のラインが目を引く。
真紀より先に彼の登場に気付いていた佳奈は、すでに釘付けになっていた。真紀も思わず見つめてしまう。
だが、真紀が釘付けになったのには別の理由があった。
「芳賀、くん……?」
「え……長谷川か?」
お互いに名前を疑問形にして呼び合うことで確信する。信じられないという気持ちが動悸を激しくさせた。
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