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僕の記憶の中に、確実に遥はいる。
でも今の遥はそれを覚えていないらしい。
突然、僕は彼女との距離が遠くなったような気がした。
「……お前って、忘れっぽいのな」
ため息混じりに出た言葉。
自分で思っていたよりも冷たく響いて、僕ははっとした。
でも遥にその冷たさは届いていなかったらしく、眉根を寄せて何かを考えている。
それに少し安心しながらも、落胆はそのまま残った。
考え込む遥を置いていかない程度の速度で再び歩きだすと、突然遥が大声を上げた。
「あっ! 思い出しました! 夏祭りのときですよね!」
笑顔で僕に駆け寄ってくる。
そう、あの後地元の夏祭りに行ったんだ。
やっと思い出してくれた、そのことに嬉しさを感じながらもそれを素直に出せない。
そんなことをしたら、さっきまで僕が拗ねていたことがばれてしまいそうで。
こんなことばかりしてるから、僕の気持ちは当分遥に届きそうにない。
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