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「てか受験生なのにバイト?」


 ふと疑問に思ったことを口にすると、雅之くんはますます渋い顔をした。


「もちろん親には反対されてますけど。ちゃんと勉強するならって条件で続けさせてもらってるんです」

「へぇー」


 やっぱりしっかりしてる。

 私だったらそんな文武両道みたいな器用なことはできない。親に反対なんてされようもんなら、多分バイトは辞めるだろうな。


「すごいね」

「そんなこと、全然ないです」

「そんなに謙遜しなさんな」


 ぽんぽん、と肩を叩くと、何キャラですか、と笑われた。

 こういうとこは、やっぱり年下っぽいかも。


「にしても懐かしいなぁー。『源氏物語』かぁ」


 置いてあった教科書を手に取り、開いていた場所を眺める。いかにも「教科書」というテキストも大学生となった今では懐かしかった。


「私もやったなー夕霧」

「…………」


 ぱらぱらとめくっていると、苦い顔をしている雅之くんが目に映った。


「……どしたの?」

「いえ……」


 今度はため息をついてノートに向かう。肩も落ちて、なんだか元気がないような。

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