5 「てか受験生なのにバイト?」 ふと疑問に思ったことを口にすると、雅之くんはますます渋い顔をした。 「もちろん親には反対されてますけど。ちゃんと勉強するならって条件で続けさせてもらってるんです」 「へぇー」 やっぱりしっかりしてる。 私だったらそんな文武両道みたいな器用なことはできない。親に反対なんてされようもんなら、多分バイトは辞めるだろうな。 「すごいね」 「そんなこと、全然ないです」 「そんなに謙遜しなさんな」 ぽんぽん、と肩を叩くと、何キャラですか、と笑われた。 こういうとこは、やっぱり年下っぽいかも。 「にしても懐かしいなぁー。『源氏物語』かぁ」 置いてあった教科書を手に取り、開いていた場所を眺める。いかにも「教科書」というテキストも大学生となった今では懐かしかった。 「私もやったなー夕霧」 「…………」 ぱらぱらとめくっていると、苦い顔をしている雅之くんが目に映った。 「……どしたの?」 「いえ……」 今度はため息をついてノートに向かう。肩も落ちて、なんだか元気がないような。 [*back][next#] |